ベアリングとは? 基本的なベアリングの役割をおさらい

ベアリングとは?

ベアリングは日本語では「軸受」と呼ばれ、回転する軸などの摺動部分を支える機構部品の総称です。

ベアリングは目に見えるところで活躍するような派手な存在ではありませんが、機械にとって重要な部品として、我々の暮らしを支えてくれています。
ありとあらゆる産業になくてはならない存在であるため、ベアリングを「産業の米」と称するゆえんでもあります。

ベアリングの生い立ちは、遥か昔にさかのぼります。キーワードは「摩擦」です。

「摩擦」とは“固体表面が互いに接しているとき、それらの間に相対運動を妨げる力(摩擦力)がはたらく現象”と定義されています。「摩擦」は人類にとって必要不可欠であり、「摩擦」が無いと人は歩くことすらままならないと同時に、時と場合によっては非常に邪魔になる存在でもあります。人類は、遥か昔からこの「摩擦」をコントロールする方法を編み出していました。諸説ありますが、事例としてよく引用されるのは、ピラミッド建造時の建材となる石を、並べた丸太の上を引っ張って運搬したとされる方法です。丸太がコロの役割をし、摩擦抵抗を減らすことで人の力で何トンもある石材を運搬することができたというものです。これが事実だとすれば、紀元前からベアリングの基礎となる考え方を人類は持っていたことになります。

ローマ時代には、現代ベアリング(転がり軸受)の先祖とも言われる玉を用いた回転板が使われていたとされ、現代のベアリング(転がり軸受)に近い構造を生み出したのが、15世紀を生きたレオナルド・ダ・ヴィンチであると言われています。その後、18世紀からの産業革命によって、ベアリングの構造は大きく発展し、現代のベアリングが形作られてきました。

ベアリングは何に使われている?

ベアリングは現代社会において実に様々なものに使われています。摩擦を減らすことにより、省エネ・低騒音・長寿命が実現でき、快適な暮らしを支えるために日夜回転しています。

身近な所のベアリング

身近なものでいうとやはり家電製品でしょう。家電製品には多くのモーターが使用されています。分かりやすい例では洗濯機や扇風機、見えにくい物では冷蔵庫や掃除機もモーターが使用されていますし、エアコン内部では送風ファンがモーターで回転しています。モーターとベアリングは密接に関係しており、モーターの回転軸を支えるために必ずと言ってよいほどベアリングが用いられています。

また、モーター以外の部分にもベアリングは様々な部分に使われています。窓枠や引き出しなどの建具に使われているヒンジやコロであったり、ベビーカーや手押し台車などの車輪、趣味性の物であれば、自転車のホイールや釣り具のリール、玩具などでは、ラジコンカーなどのわかりやすい物から、最近ではなわとびに組み込まれていたりもします。

自動車に使われているベアリング

人々の生活を支えるために必要不可欠となった自動車には、特に多くのベアリングが組み込まれており、安全性・耐久性・利便性に貢献しています。わかりやすい所で言えば、タイヤ・ホイールを支えるハブと呼ばれる部分があります。これは、回転が目に見えるためわかりやすいと思います。

ちょっとメカに詳しい方であれば、エンジンやトランスミッションなどの駆動系にも多用されている事が想像できるかと思います。これ以外にも、モーターを使うような電装品から、カーエアコン、ステアリング、果てはドアや内装品まで、自動車のありとあらゆる箇所でベアリングが活躍しています。

一台の自動車で100~150個ものベアリングが使用されていると言われています。

インフラを陰で支えるベアリング

日頃あまり意識しないところでもベアリングは活躍しています。

電車や飛行機、船などの交通系のインフラはもちろんですが、産業設備、農業機械、建設機械、ビル設備、倉庫などありとあらゆる稼働部に様々なベアリングが使われています。設備などに使うベアリングは、大きいものになると数メートルになるものもあります。

様々な所で使われるため、中には人間では耐えられないような過酷な環境下で回転し続けているベアリングや、宇宙に飛び出しているベアリングもあります。
ベアリングは様々な所で人々の暮らしを支え、科学技術の発展に貢献しています。

ベアリングの種類

ベアリングは大きく「転がり軸受」と「滑り軸受」に分けられます。

「転がり軸受」とは転動体と呼ばれる玉(またはころ)により、物体同士の摩擦を転がり摩擦に変換することで、摩擦係数を減少させる構造を持った軸受のことを指します。

「滑り軸受」とは油や空気などの流体を物体同士の間に介在させることにより、摩擦係数を減少させる構造を持った軸受のことを指します。
どちらもベアリングの一員ですが、このコラムでは広く一般的に普及している「転がり軸受」について解説をします。
(「転がり軸受」と「滑り軸受」の特徴やメリット・デメリットについては、機会があれば別コラムで紹介させていただきます。)

「転がり軸受」の大きな分類として、荷重負荷方向による分類と、転動体の種類による分類があります。
それぞれの分類の中で、形状や構造、用途などに応じて更に細かく分類されていきます。

荷重方向による分類

軸やハウジングの回転軸に対して垂直方向にかかる荷重(=ラジアル荷重)を受ける用途に適した構造を持つベアリングを「ラジアルベアリング」と呼び、回転軸に対して平行方向にかかる荷重(=アキシアル荷重)を受ける用途に適した構造を持つベアリングを「スラストベアリング」と呼びます。

実際には、純粋な垂直または平行な荷重で使われることはほとんどなく、ラジアル荷重とアキシアル荷重を合成した荷重を受けることになりますが、主となる荷重方向からベアリングを選定します。

転動体の種類による分類

転動体はベアリングの内部に組み込まれている玉またはころを指し、転動体が玉である物を「ボールベアリング」(玉軸受)と呼び、転動体がころである物を「ローラーベアリング」(ころ軸受)と呼びます。

それぞれに特徴を持っており、ベアリングの使用条件や用途をふまえて、適した形式を選定します。

 

ベアリング(転がり軸受)の基本的な構造

ベアリング(転がり軸受)の基本的な構造は以下の通りに構成されています。

  • 軌道輪(内輪/外輪)
  • 転動体(“玉”または“ころ”)
  • 保持器

それぞれの構成部品の潤滑を目的としてグリースなどの潤滑剤が封入され、潤滑剤を密封するためのシールドやシールなども併せて用いられることが多くあります。

構造としては内輪と外輪の間に複数の転動体が等間隔で並び、保持器でその間隔を保持します。軌道輪と複数の転動体はそれぞれ“玉”なら点で、“ころ”なら線で軌道輪と接触することとなり、内輪または外輪が回転した際には、間にある転動体が回転しながら軌道上を公転し、軌道輪同士の摩擦を転がり摩擦という非常に小さい摩擦係数の摩擦にすることで、滑らかなベアリングの回転を実現しています。

ベアリングの製造方法

理解を深めるために、ベアリングの製造方法についても少し触れておきます。ベアリングは大きくは以下の流れで製作されます。

・旋削
・熱処理
・研削
・組み立て

ひとつずつ解説します。

  1. 旋削(せんさく)
    軌道輪の形状をおおまかに形作るため、材料となる鋼材を回転させながら、刃物を使って希望する形に削り出します。
  2.  熱処理
    材料の強度を上げるために、焼入れ焼戻しを行います。
  3. 研削(けんさく)
    おおまかに形作られた材料を、ベアリングとして使えるように、砥石を使って研磨することで、精密な寸法調整と磨き上げを行います。
  4. 組み立て
    出来上がった軌道輪に、玉を挿入し、保持器を固定してベアリングを組み立てます。

ベアリングの未来

人類が物理現象から解放されない限り、ベアリングは無くてはならないものであり続けると考えます。

ベアリングの誕生から現在まで、技術発展・多様化に合わせて様々なバリエーションのベアリングが生まれてきました。
今後も、あらゆる分野でユーザーの要望が多様化していく中で、細やかなニーズに対応したベアリングが生まれ続けるものと思います。

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