樹脂巻きベアリングとは

ベアリングの外径に樹脂を巻くことで、スムーズな回転が期待できる樹脂コロとして使用できます。

家具や設備など、幅広い業種の製品への利用が可能であり、従来の樹脂コロで発生していた摩耗や異音、動作不良などの改善効果が期待できます。

取り付け精度、回転精度も高くなるため、従来の樹脂コロでは対応が難しかった箇所への適用も可能となります。

樹脂加工方法の種類

樹脂は大きく分けて成型と切削という二種類の加工方法により加工されます。この二つの加工方法にはそれぞれ長所と短所があり、目的に応じて使いわけることが重要です。

1、成型加工
樹脂には、熱によって軟らかくなったり硬くなったりする性質があります。
成型加工はその性質を利用して金型を用いて型形状を転写することで、望みの形状を作る加工方法です。
複雑な形状を含む多様な形が、短時間で形作れるため、同一の形状を大量に作る場合に向きます。
デメリットとしては金型が必要となるため、初期投資費用が高くなり、製造ロット数が少ない場合は、1個あたりの加工単価が高くなってしまいます。
加工条件により、 ボイド(樹脂内部に空洞ができる)、ウェルド(金型内へ流れ込んだ樹脂が合流する部分で樹脂がつながっていない)などの不良が発生することがあり、適正な加工条件を定めるためにはノウハウが必要とされます。

2、切削加工
切削加工は、押出成型などによって固められた樹脂の塊を刃物などによって削り、望みの形状を作る加工方法です。
削り方を変えることで、様々な形を作ることができるため、小ロットの生産に適しており、
成型が難しい厚肉の部品や、試作などの形状変更が頻繁に必要な場合などによく用いられます。
初期投資費用が抑えられる反面、複雑な形状では加工が困難であったり、加工単価が高くなる場合があります。

一定以上のロット数を生産する場合は、成型加工の方が製品1個あたりの単価は安くなるのが基本ですが、金型のメンテナンス費用や作業性など、総合的に判断して加工方法を選択します。

最近では、成型加工の一種として、初期投資費用を抑えることができる3Dプリンタを用いた成型技術も発達してきています。

樹脂材料の選定

樹脂は大きく2つの種類に分かれます。
1つは「熱可塑性樹脂」と呼ばれる、一度固化した後でも加熱すると再軟化する特性を持つ樹脂になります。
もう1つは「熱硬化性樹脂」と呼ばれる、一度固化したら熱が加わっても軟化しない樹脂です。
その性質から「熱可塑性樹脂」はチョコレート、「熱硬化性樹脂」はビスケットとしてよくたとえられます。

「熱可塑性樹脂」の中でも、樹脂の性質によりさらに細かく分類されており、安価で幅広く用いられる「汎用プラスチック」、耐熱性や機械的強度に優れ工業部品に用いられることが多い「エンジニアリングプラスチック(エンプラ)」、その中でも特に耐熱性や機械的強度で秀でているものを「スーパーエンジニアリングプラスチック(スーパーエンプラ)」と呼んで、分類されています。

「汎用プラスチック」に分類される樹脂の一例としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などの樹脂が該当します。
「エンジニアリングプラスチック」に分類される樹脂の一例としては、6ナイロン(PA6)、ポリアセタール(POM)などの樹脂が該当します。
「スーパーエンジニアリングプラスチック」に分類される樹脂の一例としては、ピーク(PEEK)、ピーピーエス(PPS)などの樹脂が該当します。

当社は、「エンジニアリングプラスチック」に分類される樹脂を得意としておりますが、ご要望に応じ様々な樹脂への対応も検討させて頂きます。

樹脂製品の一例

樹脂成型、メッキ、組み立て

プレス、冷間鍛造、切削、樹脂成型、メッキ、組み立て

プレス、冷間鍛造、切削、樹脂成型、メッキ、組み立て

プレス、冷間鍛造、切削、樹脂成型、メッキ、組み立て

プレス、冷間鍛造、切削、樹脂成型、メッキ、組み立て

樹脂成型、切削、研削、焼入れ焼き戻し

過去事例①(成型不具合の改善)

 
POMを用いてインサート成型を行ないましたが、時間を置いて割れが発生するという相談を受けました。

当社では様々な樹脂に対応できるため、PA6 GF MOS2にて試作を提案させていただき、割れの改善ができました。
※GF=ガラスファイバー  MOS2=モリブデン

過去事例②(成型不具合の改善)

 
新しく樹脂成型品の開発をするため、様々な樹脂材で多種のトライを行ったものの、すべてウェルド部での変形や割れが発生し、対策の相談を受けました。

すべてウェルド部で問題が発生していたため、根本的な解決策としてウェルドが発生しない金型(フィルムゲート)を提案し、問題解決となりました。

過去事例③(金属音の改善)

 
ベアリングをローラーとして使用しているお客様から金属同士の接触により音がでてしまうという相談を受けました。

当社から静音性が高い樹脂巻きベアリングにすることを提案し、音の問題を解決することができました。

さらに、樹脂巻ベアリングにしたことにより軽量化にもなりお客様も大変満足して頂いております。

過去事例④(帯電防止)

 
他社製の樹脂巻きベアリングを使用されていたお客様から、頻繁に回転不良が発生するという相談をいただきました。
状況を確認させて頂くと、ベアリング内部に異物(ゴミ)が混入しており、さらに周辺の摺動部にも大量の埃が付着していました。

調査の結果、樹脂巻きベアリングに静電気が帯電しており、埃を引き寄せていることがわかりました。

対策案として導電性樹脂の採用を提案させていただき、結果、回転不良は改善され当社製品を採用していただいております。