昨今の急激な社会情勢の変化により、中国製ベアリングの導入についてご相談を受ける機会が増えています。
弊社にご相談頂き、サンヒル製(中国)ベアリングへの切り替えに至ったケースをご紹介させていただきます。
安くて高品質な中国製ベアリングとは
中国製ベアリングへの切り替えを検討される場合、コストメリットに着目されると思います。しかし品質が悪く、すぐ壊れるというイメージを持たれているのではないでしょうか。「安かろう、悪かろう」の代名詞と言われていた中国メーカーですが、中国の製造業界は日々進歩しており、今では安価で品質の良い製品を提供できる企業が増えてきました。
中国の製造業界では品質意識の二極化が進み、世界トップシェアの企業と提携し最先端の技術を有するメーカーと、一方では未だ「安かろう悪かろう」に該当するメーカーも存在します。
中国製ベアリングを導入する際は、いかに安くて高品質な製品、いわゆるコストパフォーマンスの高い製品を作るメーカーを見分ける目を持っているかが重要になります。
見分け方には様々な要素がありますが、詳しくは別コラム「中国製ベアリングで失敗しないための方法」で紹介しています。
ベアリングの知識(メーカーを見分ける目)が乏しい商社から購入するリスクとデメリット
日本企業が中国製ベアリングを購入するケースは、商社経由が多いのではないでしょうか。
商品の流通に対しては大きなメリットがありますが、ベアリングの知識(メーカーを見分ける目)が乏しい商社の場合、以下のリスクやデメリットが想定されますので、一部ご紹介いたします。
低品質なベアリングを購入するリスクがある
安価で販売しているベアリングは、人件費だけではなく検査などの品質に関わる製造コストを削減している可能性があります。
コストだけを見て現場確認やベアリング調査を行わず、お客様に販売しているケースが存在します。
安易に安いからと中国製ベアリングを導入すると、低品質のベアリングを購入するリスクに繋がる可能性があります。
品質の良し悪しが判断できない
適切な現場確認を行っていない
→品質を担保するために、工程が正しく管理された現場が「良い現場」とされています。
製造現場の確認を行っていたとしても、何が良い現場か分からないまま行っている場合があります。
ベアリングの知識がなければ品質・安全に関わる管理体制に目を向けることができず、良い現場なのか、今の現場に何が足りないのかチェックをすることができないため、品質の良し悪しを判断できません。またそのラインは普段から稼働しているラインなのか、お客様へ見せるために準備された綺麗なラインなのか判断を誤る可能性があります。
「スペシャル品」と通常品を見誤る
初回納品時や試作品提出時には「スペシャル品」を納められ、品質が良いメーカーと誤判断する可能性があります。
※スペシャル品:採用してもらうことを目的とした、通常よりコストや労力をかけた特別品
日が過ぎるごとに初回の品質が保たれていない劣化品が徐々に納入されても、商社にベアリングの知識がなければ気付くことが遅れる場合もあります。
最適なベアリングが調達できない
ベアリングは寸法だけではなく、詳細仕様の指定が必要です。ベアリングの知識に乏しい場合、軸受寿命やグリース寿命、軸受隙間の計算ができず、最適なベアリングの調達は難しくなります。
商社やお客様の意思が中国メーカーに伝わらない
やりとりがうまくいかず、交渉する余地もない急な連絡による値上げや仕様変更などが行われてしまう場合があります。
またトラブル発生に弱く、すぐに対応してくれないケースも多く見受けられます。
上記のようにベアリングの知識(メーカーを見分ける目)が乏しい商社から購入することは、トラブル発生時にかえってコストがかかる、信用を失うなどリスクがあります。
お客様がサンヒル製(中国)ベアリングに切り替えた具体例
お客様が仕入先変更を検討した理由
商社経由で中国製ベアリングを購入していたお客様ですが、購入先の商社がベアリングの知識に乏しく、中国メーカーと関係性の構築ができていなかったため、事前連絡のない急なコストアップ、納期遅れ、品質問題など、様々な問題が発生しておりました。
今後の取引は困難と判断したお客様は仕入先の切り替え検討を行い、その一社としてサンヒルにもご相談をいただきました。
サンヒルのベアリングも中国製ですが、弊社は中国に生産拠点を構え、協力メーカーとの信頼関係を構築しています。そのため、協力メーカーとは密な報連相のやり取りが可能です。
また日本サンヒルの指導の下、お客様のご要望に合わせて品質管理手法をアレンジし、品質管理体制の構築をしているため日本レベルの品質管理が可能です。お客様にもその点を評価いただき、弊社のベアリングに切り替えを行っていただく運びとなりました。
サンヒルを選んでいただいた理由
① 中国に生産拠点があり、協力メーカーと信頼関係が構築できている日本サンヒルが窓口となるため密なやり取りが可能
② 検査体制、品質管理体制が日本レベルなので安心
③ 日本サンヒルにてベアリングの在庫保有をしているため、安定供給が可能
上記の3点から現行品よりコストパフォーマンスが高いと判断されたため、サンヒルへ変更となりました。
仕入先の切り替えにあたり実施した内容の一例
お客様の現行ベアリングとサンヒル製(中国)ベアリングの単品について、寸法や耐久性能の比較調査を弊社にて行い、お客様の実機にて耐久性能を確認頂いたうえで、切り替えに至りました。
① 寸法測定
- ベアリング外形寸法(内径、外形、幅)の測定
- ベアリングの内部寸法の測定
【内部設計が重要】
ベアリングの内部設計に関しては、明確な決まりごとはなく、ベアリングの内部寸法によって品質の差が現れることもあります。内部設計はベアリングメーカー各社が独自ノウハウにより定めており、基本的にお客様にお教えすることはありません。特に商社よりご購入されている場合、内部設計が開示いただけないことはよくあります。
JISで定められている内径、外形、幅が仕様に合っているからとベアリングを選んでも、内部設計がお客様の要求仕様に合致していなければ最適なベアリングを選定できているとはいえません。
弊社はベアリングメーカーならではの知見を基に、内部寸法などの測定も行って、比較を行うことが可能です。
形状測定機
② 評価試験
お客様の使用条件を確認したうえで回転数、負荷荷重、耐久時間などを定め、ベアリング単体での耐久試験を実施し、比較を行いました。
【実施した試験条件】
回転数:7,000r/min
負荷(ラジアル)荷重:0.65kN
耐久時間:332時間
※お客様が求める耐久時間と選定したベアリング仕様が適切かどうか、設計が現実的かどうかの判断もサンヒルでは可能です。
サンヒルから最適なベアリングのご提案をさせて頂きます。
耐久試験機
比較評価を行った結果、サンヒル製(中国)ベアリングが勝りました。
お客様で使用されていた現行品の中国製ベアリングだと、目標の4分の1の時間で破損する結果となりました。
個体差を見るために追加試験も行いましたが、結果は変わらず同等の時間で破損しました。
評価結果をサンヒルより報告書として提出させて頂き、お客様にて結果を確認頂くことで、今後の進め方を検討いただきました。
報告書として確認いただくことで、サンヒル製(中国)ベアリングの方が性能として優れていることが一目瞭然となりました。
③ 実機試験
お客様にてベンチテスト、実機試験を行い、ベアリングを組み込んだ機械として問題ないことを確認頂き、切り替えにあたっての承認を頂きました。
サンヒルではお客様から合格の連絡を頂くだけでは終わりません。
実機試験後のベアリングを弊社が預って調査を行います。
ベアリングの外観に異常はないか、鋼球に傷はないか、内部異常の有無、回転検査など、ベアリングの状態を確認し、報告させて頂きます。
調査報告書
中国製ベアリングはどこから購入するかが重要
サンヒルに切り替えて頂いたことで、お客様の課題であった「意思疎通がうまくできていないことからくる、諸問題」が改善されました。
改善に至った要因はひとつではないと思いますが、「ベアリングの専門知識を持っていない商社経由で、中国企業に発注していた」ことから「ベアリングを得意とするサンヒルを経由する」ことへの変更が、大きく寄与しているように思います。
ベアリングの専門知識がなければ、中国企業と対等な交渉をすることができず、コストアップや不具合対応、急な調整なども難しくなります。良好な関係を築くことは難しいでしょう。
サンヒルでは現在ご使用されているベアリングとサンヒル製ベアリングの比較調査から報告書のご提出・説明まで行わせていただきます。
お客様の製品図面・製品構造を拝見させて頂ければ、アドバイスや提案などもさせて頂きます。
何かお困りごとがございましたら、サンヒルまでお気軽にお問い合わせください。